こんにちは、南三陸うたつ丸栄水産スタッフです。
今回も南三陸地方の方言/言葉に関してになります。
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家を建てるときに餅をまく風習は、調べてみたら西日本にも東日本にもあるのですね。
当地域、宮城県の北東部(南三陸)にもあります。
家を建てるときの、建前>棟上げ>上棟式のとき、厄災ばらいなどのために、袋に詰めた小型の餅を高い所からまいて、ご近所さんも集って皆でわいわい拾うというのが、私が記憶している餅まきの風景です。
当地域では、この餅まきのことを、「ごす餅」(ごすもち)と呼びます。
「ごす餅まき」と言ったりします。
さて、この「ごす餅」。
「餅」はそのまま餅として、「ごす」の意味や由来はなんだろうと疑問に思っていました。
最近、『歌津町史』を見ていて「ごす餅」と関係がありそうな用語を見つけました。
それは、「具す餅」というものです。
歌津町史に載っていた「具す餅(ぐすもち)」。
「ごす餅(ごすもち)」と非常に近い語感のうえ、建築の「建前」に際しておこなわれる儀式として載っていた用語です。
類似するものがあります。
以下、「具す餅」の説明について、歌津町史からの引用になります。具す餅 具す餅は建前の前日までに所要のものをついてそろえておく。通常左の通りである。
鏡餅=二個、三ッ重ね=三組、十二のお供え=一組、九耀の餅=一組、隅の餅=四個、年の餅=一組
屋主の餅=屋主の年数と同数、まき餅=多数
(註)鏡餅・三ッ重ね・十二のお供え・九耀の餅は棟祭神事のとき神前に供え、終われば棟梁が自宅に持ち帰る習わしである。
隅の餅は屋上から四隅に一ヶずつまき、拾うのは、将来その家の跡取りとなる者とされている。
引用元:『歌津町史』
(▶原文は縦書き文章です。一段落目の「左の通りである」は、ここでは「次の通りである」に置き換えるとスムーズです)
上記の引用文のなかに「まき餅=多数」(を準備する)とも書かれているので、具す餅は「餅まきをする」前提であることがうかがえます。
以上のことから、「具す餅」が「ごす餅」となり、定着した可能性を感じました。
「具す餅」はネット検索をしても現時点では1件も出てこないので、いかに現在は言われなくなった言葉かがうかがえます。(具す餅の用語が載っていた『歌津町史』は、昭和61年の発行です)